今月は今がもろ旬の『スズキ』をお伝えしようと思います。
何でも食物は旬というのがあると思いますが(旨味の時期、漁獲量の量が多い時期の二種類があると思います)、この今回のお届けするのは旨味に関する旬の事でして、味覚、浜値の価格が極端なスズキです。
この時期ですとお魚屋ではスズキを購入するのは難しいと思います。
銀座の高級寿司店とか、万札を何枚か持っていかないと食す事が出来ない割烹料理店でお出しになる魚種の種類だと思います(なんせ貧乏人なので間違っていたらすいません)。
ちなみにスズキの旬というのは漁師さんの言い伝えでありますが『ツツジが咲く頃から初秋のススキの咲く頃まで」の魚と言われております。
(全くの横道ですが、小津安二郎監督の「麦秋」という作品がありますが何と初夏の俳句の季語とはしりませんでした。そのほかの作品として「晩春」もありますね)。
このスズキですが、秋から春先まで冬になりますと異常なくらいに何百キロ、何トンキロという量が毎日定置網に入ってきます(スズキの網は定置網の四隅の2箇所に上潮と下げ潮の時に入るように仕掛けます)。
網に入るのはスズキの勝手です。それを本ちゃんの定置網を絞る前に水揚げしなければなりません。困ったもんです。
と言うのは冬になりますとあまりお金にならない魚種なんです。
浜値で夏場ですと天然真鯛、本マグロに引けを取らないキロ2、00円を越す日もありますが、冬場はなんとキロ80円なんていう日もあります。何百キロ、何トン採っても売り上げ金額は少なく苦労の割に親方の気持ちを察してしまいます。
時化の後なんかは特に大漁の水あげです。おそらく網の中は静かで居心地が良いからなんでしょうか?。とにかく時化の後は大漁でした。
まー日常の作業なので仕方がないですが、定置網の仕事は12月30日から翌年の1月3日までが市場との関係で休業となります。
でも、でもですよ!。何回がありましたが正月元旦の夜に明日スズキの水揚げをするので来て欲しいとの連絡が入りました(それも親方でなく奥様からです)。
12月30日、31日、年明け新年の1月1日と3日間水揚げをしていないので、大漁のスズキが網に入ってしまい網が破損しそうとの事です。
翌日1月2日と言えば「箱根駅伝」の初日で、大変楽しみにしている行事ですが、仕方がなく作業をしてなんとか観戦することが出来ました。
で、ですよ!。頑張って大漁のスズキの水揚げは終了しますが、網の中は昔の通勤時のラッシュアワーの状態なのか、お互い身体をぶつけ合った所為で、表面が赤くなりとてもとても売り物にはならない状態になってしまっています。
市場は休み、こんなに大量のスズキをと思っておりましたが、蛇の道は蛇でした。
地元の「長井水産」という会社が引き取りにきました。
首の後ろに出刃包丁で背骨までカットして血抜きをして、発泡スチロールの箱に何匹か詰めた状態で、そして何十箱がパレット積まれ、そのパレットが何個か置かれた状態になります。
それを「長井水産」のトラックが来てあっという間に積み込んで去って行きました。
後で聞いた話ですが、長井水産の加工場で加工し(フライなのかどんな加工品は聞きませんでした)、あの国防を担当する武山駐屯地に全て送られるとの事でした。
こうゆうところでも国防予算の節約を考えていることに関して頭が下がる思いです。
日常的にもスズキは冬場になりますと毎日おかずとして配給がありましたが、この時は好きなだけとい状態でした。
そんな冬場のスズキの料理方法をお伝えいたします。
先ず下ごしらえですが、まずスズキは背びれ、尾びれ、胸びれに鋭いトゲがあります、それをユーチューブではキッチンバサミで切り取るようにとの事ですが、私は出刃包丁で骨に沿って身の部分にまで切り込みを入れ、手でむしり取っていました。
背びれは左右の背中の骨に沿って切り込みを入れ、手でむきむきというような感じでむしり取りました。そうすると身に骨と言うかトゲがが残りません。
それと頭部の「えら」の部分は鋭いカミソリのような部分があり鱗を落とす時は注意です。
内臓(卵巣、精巣を捨てないで)、腹部の薄皮、背骨の血合いを歯ブラシで取り、下準備は完了です。
ここでどのような料理に仕上げるかで料理方法が違っています。
私の場合ですが、刺し身は美味しくないで身等は下記の方法で料理しました。
1、皮をひいての三枚に下ろしての漬物。
2、皮を残しての二枚に下ろしての干物。
3、卵巣。精巣は特別料理に。
まず1の料理ですが、三枚におろした身を食べ頃のサイズにカットして漬物にします。
漬ける床の作り方ですが、冬に 成りますと酒蔵から大量の酒粕が出回ります。その酒粕に味噌を1対1で加え日本酒 で解いて「ぬか床」位か、ちょっと柔らかさにして完成です。
ユーチューブでは、スズキを塩で臭みをーーーなんて教えておりますが、水洗いをして水気を取った身を糠漬けのようにガンガン入れていきます。
漬け床が満杯になるまで漬けていきます。
そして、ここが大事なんですが2日で取り出して漬け床の味噌などを綺麗に水で洗い(しないと焼いた時に焦げてしまします)、水気を取ってラップで包んでジプロックで冷凍保存です。漬け床は再利用です。
何故2日間かというと3日間漬け込むと味は濃くなりますが、焼いた時に身が柔らくなりすぎ引っくり返せなくなります。
そして2の料理方法ですが、面倒なことはしなくていい料理方法です。
残った身を食べ頃サイズにカットしたら、大きな器に海水より漕い塩水に漬けるます。1時間か2時間くらいで濡れたまま干しかごに並べ表面が乾燥するまで干します。そしてラップで包みジプロックで冷凍保存です。
あまり干すと身が固くなりますので注意です。干すタイミングですが漬けている切り身の端を2mm位切り塩の周り具合を味見して、自分の合う塩加減で干します。
そして3の料理方法ですが、「からすみ」を作るんです。何故か不思議なんですが水揚げされるスズキは殆どがメスで大きな卵巣がありました。雄の精巣(ボイルして味ポンで食しました)は少なかったです。
その卵巣をさばく時にボラの卵巣のようにしっかりとしていないで、傷をつけないようにして取り出します。それをボラのからすみの作り方のように血抜きとか酒につけるとかは一切飛ばし、たっぷりの粗塩をまぶし1時間くらい漬け込みそれを粗塩を手で取り去りそのまま干しカゴで乾燥です。完成までにが何日かかかります。固くでなくねっとりでなくなりましたら完成です。完成品は3分位1位の大きさになってしまいます。ボラの場合は皮をむき完成ですが、ここでは皮などは向きません。食する時に皮をむいて食べます。なんとも言えない酒のつまみには最高です。
まだまだ先の話ですが冬になりましたら是非お試しください。
その前に、今が旬のスズキを入手して美味しい感覚を確かめておいてください。
この時期のスズキの料理法等として「あらい」という料理方法がありますが、私は邪道と思います。と言うのは氷水で刺身にした切り身を洗うと、水面に白い油がびっしりと浮かび旨味が溶け出したんではと感じられます。
確かに冷風感、歯ごたえは良いのかもしれませんが私はお勧めできません。
で、スズキには『ヒラスズキ』と言う魚種がおります。
外型は見た目ですぐ違いが分かる魚種ですが、友人の料理長の計らいで両方の刺身を食する機会がありましたが、食べた時期とか定かでないので正確な判断はできかねますが、私には浜値で桁が違う魚には感じられませんでした。
ただ料理長が言って言っていたのは、寝かしておいて一番美味い時に出すのですが、刺身の色がスズキはくすんでしまいますが、ヒラスズキはくすまないと言うことでした。(そこまで注意を払うのがプロの料理人なんだなーと感心しました)。
次回は「ゴマサバ」を考えております。
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