海難事故それも衝突事故。
頻繁に起こる事故として忘れかけた頃必ず起こってしまう事故の種類でもあります。
先日の「幸吉丸」と「たかちほ丸」の衝突事故。今回は3人が生存して戦い終わり帰還したことは少なからずほっとさせた事例でした。
一般の方はあんな広い海で何で? とお思いでしょう。
私事ですが30年近くヨットに携わってきましたが、衝突という致命的な事故は有りませんが、もしかしたら衝突していたかもしれないと思い当たる事がありまして、リプルのクルーザースクールでは経験に基づき最悪にならないようにと色々とお話をさせて頂いております。
陸、海、空とそれぞれ航空機、船舶、自動車を運行するに当たりそれぞれの約束事がありまして、海に関しても「海上交通安全法」、「海上衝突予防法」、等々…が有り、それぞれ定義なり、当該船舶の取らなければならない行動方法が決められております。今回の衝突事故について私が知っている事実と、法律に基づいた考え方と、リプル号でのお話を絡めちょこっとお話をさせていただきます。
先ず、「幸吉丸」と「たかちほ丸」で衝突事故が発生したことは事実です(自分で見たことはないがメディアでは報道している)。 その両艇の損害状況も知らされました。「幸吉丸」船体が折れてしまう。一方「たかちほ丸」の左舷前方に数メートルに及ぶ擦り傷が有るとのことでハルのペンキも一致した。
とのことを聴くに当時両艇は 「海上衝突予防法」に定義する「横切り船」の状態と思われます。 当法律では「動力船(漁労に従事している船、帆船、運転不自由船、操縦性能制限船、…等は又別です)」
において衝突のおそれのある時は、他船「たかちほ丸」を右舷に見る船舶 「幸吉丸」が進路を避けなければならない、となっています。法律的には幸吉丸は、船長はブリッジで航海日誌を書いており、甲板員はブリッジに下で睡眠中であり、
カメラマンは一番下の船室で休憩中であったのが事実ならば、決して漁労に従事している船とは定義出来ず、正に幸吉丸は「避航船」で、たかちほ丸は「進路保持船」の状態であったと考えられます。
一般的には避航船はやむ得ない場合を除いて、大きくそして早めに右転舵して進路保持船を避けなければならず、一方進路保持船は艇速、針路を保持しなくてはならないのです。
多くの方は進路保持船は航行に関して権利があるかのように捉えれておられる方がいらっしゃいますが、 権利ではなく進路、速度を保ちながら衝突を避けなければならないという義務を負わされているのです。
ヨットレースで「スターボーーーーー!」とか「シモ!,シモ!」なんて、さも鬼の首を取ったように叫びますが、 権利行使ではなく、衝突を避けるために相手艇に対して注意を促すというのが正しいと思います(今回の事故の最大のミス事例ではないかと思います)。
我がリプル号も色々な場面に遭遇しますが、海上衝突予防法では動力船は「帆船(リプル号のような船)」を避けなくてはならないと記されておりますが、
当該法律の基本概念は衝突を避けるが趣旨なんで、我々はお遊び、彼らはお仕事、だからこちらで 避航しよう…と、今まで行ってきました(これからもですよ)。
当該法律を権利と義務という様に捉えますと、横須賀猿島沖で起きた「なだしお」事故になり、何人もの尊い命が無くなってしまうんです。
で、今回の事故は何故起こってしまったのかを私なりに考えました。
先ず、幸吉丸側ではワッチ要員が居なく、ただ一人周りを見渡せる状況にいた船長の視線は航海日誌に向いており、状況が把握できなかった。一方たかちほ丸側では目視とレーダー要員の内一人がいなくワッチ体制に不備が有った。この事が今回の最大の原因ではないかと考えられます。
海難審判員でない私がこの様なこと言うのには理由があり記しております。
かつて副業で回航(造船所から新艇をオーナーのバースまで届けるお仕事)をしていた時ですが、遠州灘を何度も西に、東に航海していたのでが、夜中なのにブリッジに人が居ない船を何隻も見てきました。現在はGPSに入力すると操舵しなくても目的地に行けてしまうと優れものの結果でしょうか?
逆に相手艇の電子機器の発達により助けられた回航もありました。20数年前、右目と口の横まで右手一指し指で軽くお口の方に下げた仕草で知られております方の艇を釜石から那珂湊まで回航したときですが(半端じゃないほどのお金を頂きました)、頃は真夏。付近の海域は黒潮と親潮がぶつかるところなのか、真夏なのに海上に出るともの凄い霧。周りは真っ白。風もなかったので機走にて太平洋を南下しましたが、視程距離は100mか200mも無かったと思います。本船航路に入ると霧笛がやたらと鳴り響きました。我々の回航艇に対して注意を促しているのは分かりました。目視の他にレーダーにて我々の艇を確認しており、衝突を避ける種の行動でした。
しかし今回の衝突事故ですが、報道されているところによりますと、進路保持船側からの避航船への注意の行動を執らなかった。また、避航船側での正に衝突せんとする時の回避行動を執らなかった。というのが今回の結果ではなかったのではないかと私は思っております。
でも本当に生きて陸に上がれたことは良かった、良かったです。
で、リプル号では下記のように衝突を避けるために実際に行っていることをお知らせしましょう(他の艇でも行っているとおもいますが・・・)。
1,ワッチ要員は必ずお願いします。(セイリングの時もヘルムスマンはヘッドセイ ルの為、 風下前方は見えなくなりますのでバウに必ずお願いします(特に風の弱いときはデッキすれすれまでフッドがきまして、
全く見えませんが、風が強くなるとリーフをしますので、デッキとフッドに隙間が出来ますのでいいのですが)
2,ワッチ要員は周りを時計の様に見立て「3時漁船1マイル」、とか「9時モータ ーボート500メートル」というように、 ヘルムスマンに情報を送っています。
3,ワッチは前方だけでなく、後方も近づいてくる船舶にも注意をしヘルムスマンに情報を送っています。
4,出会い船(夜間は両舷灯がみえます)に関しては早めに避航動作を執っております。
5,横切り船(夜間はどちらかの舷灯が見えます)に関しては船首をを合わせず、「けつなめ(誰が言い出したんだろう?)」を行っております。
6,浦賀水道航路を横断するときは、相手艇は12ノットで航行しておりますので、交差するだろうと思われるところを設定し、 最低でも3倍以上の距離が無ければ、減速等の調整ををしております。
7,リプル号には一応6人乗りの救命筏が積んであり、レーダーリフレクターも夜間 は必ずバックステイにぶら下げるようにしております。
等々権利(?)を主張するのではなく楽しいセイリングを台無しにしないようこれからも行っていこうと思っています。
PS・・・「落水」に関してはリプルニュース2003年6月号を。「潜水艦事故」に関しては2001年3月号をご覧下さい。
私の年間の楽しみの一つでありますわかめ拾いですが、今年は水温が下がらずわかめの成長が芳しくありません。
長浜に流れ着くわかめは丈が短く、それにもまして 成長をしていないため、波に対して抵抗力があるためかコンビニ袋にほんの少しだけという感じです。
毎年楽しみになされていらっしゃいます会員さんもがっかりという感じです。一応報告しておきます。ここにも地球温暖化の影響が出ているんでしょうか?
本当に心配です。
|